10年前の3月11日、その日は、今日と同じ県立高校の合格発表の日だった。
県立高校の合格発表の日を迎えると、いつもあの日のことを思い出す。

その日は、合格報告をしに来ていた、生徒数人と教室でその瞬間を迎えた。
教室が揺れ、地震だとわかった。危険を回避するため教室の外に出ると、
車は飛び跳ねるように揺れ、電柱は折れんばかりに激しく揺れていた。
その光景を目の当たりにし、尋常ではない事態がおこっているのだと本能で感じた。

揺れがおさまり、教室を確認すると、幸運なことに、電気や水道、ガスも使えた。
電気がついていたこともあり、生徒や講師が自然と教室に集まり、情報を共有し、
とてつもないことが起こっていることを知った。

あの日から10年。
時がたつのは早いもので、少しずつ、私たちはあの日のことを思い出す機会が減ってきている。
私は、あの日から変わらない想いがある。
それは、あの日、何もできなかった後悔だ。

被災した多くの人々が、大変な生活を送る中、日本中から多くのボランティア、
支援が被災地に届けられ、世界中から多くの人々が支援の輪に加わった。
そのような中、私は何をしただろう?
コンビニなどに置かれた募金箱にいくらかのお金を入れるだけで、
何一つ被災した人たちのために行動することもなく、自分の生活を送っていた。
何もできなかった。いや、できたはずなのに、しなかった。
行動する勇気がなかっただけだ。

その後悔が、今も心に残っている。

それから、私は、教室に募金箱を置き、募金活動を行うことにした。
もちろん、生徒たちに強制するようなことはない。
熊本地震、北海道胆振東地震など、日本赤十字社や国の義援金に支援金として送金した。

いまだに、現地に赴き、ボランティアをすることも、物資を直接、自分の手で届けることもできていないが、
あの日の気持ちを忘れずに、募金活動だけは続けて行きたいと思う。
大したことは何も出来ていないが、せめて、少しだけでも役に立ちたい。

そして、生徒たちが、私と同じ後悔をしないように、
支えあい生きていくことの大切さ知り、
勇気ある行動力をもった大人になってほしい。
何もできなかった私でも、反面教師にはなれるはずだ。
だから、伝えなくては。
それは、私の使命だと思う。