数年前、進光ゼミナールで保護者会を開催したことがあるのですが、その時、お越しいただいた、ゲスト講師が「子どものやる気を引き出す親のアプローチ」と題して、お話をしてくれたことを、ふと、思い出す機会がありましたので。少しだけお話をさせていただきます。

今回は、その講演の中で、「話せばわかる」ということについて書きたいと思います。

子育てはコミュニケーションです。それも、子どものセルフ・エスティームを上げることを目指すコミュニケーションです。ですから、この話は、最初にコミュニケーションについての説明がありました。

コミュニケーションは万能ではなく、発信者の意図は、簡単には受信者に100%伝わることはほとんどないことを理解してもらうところから話はスタートしました。

そのために、コミュニケーションにおいては、発信者よりも受信者の方が、力が強いことを実感してもらうために、最初に保護者の皆さんに絵を描いてもらいました。講師が言うことを参加者の皆さんに絵にしてもらって、どの絵も同じ絵にはならないことを実感してもらいます。

講師の言うことは、参加者全員が同じように聞いていたはずですが、それを絵にする皆さんは、講師の言うことを人それぞれの考えや経験で聞くのだということを実感してもらい、コミュニケーションもそれと同じなんだということを理解してもらいます。

これは、日常的に繰り返される「何度も同じことを言わせないでよ!」という怒りの感情が、実は不当なものなのだ!ということを言うための仕掛けなのですが、参加者のお母さんやお父さんは、この絵を描くことで、案外素直に反省してくれます。そうだったのか!と。

次に1円玉の実際の大きさを丸で書いてもらいました。大体の参加者は、実際の1円玉の大きさよりも小さく書いてしまうものですが、それは、実際の価値が小さいからなのです。日頃の先入観が、実際のものを素直に見せないことを実感してもらうために行うワークです。

自分の息子や娘は、「こういう子どもだから」と決め付けて、実際の息子や娘のありのままの姿を見落としてしまうことを警告するために行うものです。

コミュニケーションの説明の最後は、魚の絵を描いて文化的な思い込みについて実感してもらいました。大体魚の絵は、左を頭にして、尻尾は右に書くものですが、参加者の98%以上の人が、そう描くそうです。右向きの魚は殆ど居ないものです。

親のこの文化的な思い込みと子どもの文化的な思い込みには、大きなギャップがあるものですから、それを意識しないで、コミュ二ケーションを取ると、子どものまだ何も染まっていない自由な発想を否定してしまったり、上手く話が通じないことがあるものです。そのために、魚の絵を例にして、注意を促しました。

こんなコミュニケーションの話をして、次に子どものやる気を引き出すための、承認する視点のお話がありました。

コミュニケーションは、受信者の側(=子ども)に大きな権利があるのだということを自覚しながら、私たちは子育てをすることです。自分の言っていることを子どもがどう受け止めるのか、そのことを親として考えて、コミュニケーションを取ることが重要なことなのです。そうしなければ、話しても何も通じない結果になってしまうかもしれません。